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近世文学(Verson:2.03)

 

  徳川幕府が成立した1603年から、明治維新の1868年までが、近世文学
の時代である。

基本情報】
  まず、作品、作家などについて基本的な情報を得るための手がかりを挙
げる。
  ○『日本古典文学大辞典』6冊 1985 岩波書店
   [参考図書、テキストなどの情報も入手できる]
  ○『新版近世文学研究事典』2006 おうふう
      [近世文学は作者も作品も数が多い。年譜や資料集などがまとめら
   れて いる作家はほんの一部で、研究を待っている状態である。代
   表的な研究分野について、今までどういうことが論じられてきたの
   か、今どういう点が問題になっているのかを概観する上で便利]

  ほかに個別の分野、作品の事典もある。以下、個別の作家については、
特に人気の高い芭蕉と西鶴を主として挙げる。ほかの作家、作品はこれを
参考にして図書館で調べてみて欲しい。
  ○『俳文学大事典』1995 角川書店
  ○『西鶴事典』(江本裕ほか)1996 おうふう
   [出典一覧だけではなく、西鶴の概説を始め、当時の社会、後代文
   学に与えた影響など、西鶴の世界を多面的にとらえ、様々な研究
   の視点を提供してくれる]

  版本・写本の書誌調査も、近世文学の重要な一面である。図書館、文庫
によっては、実際に手にとって資料を調べることもできる。資料の所蔵を調
べる基本
的な図書は、以下のもの。
  ○『補訂版 国書総目録』9冊1991 岩波書店
   [著作者索引もあり。また、『国書人名事典』(5冊1999 岩波書店)
    により、著者についておおよその情報も得られる]

  また、図書館にない本や雑誌の検索には以下の検索が便利。
  ○国立国会図書館 http://www.ndl.go.jp/jp/data/opac.html
  ○国文学研究資料館 http://www.nijl.ac.jp/index.html
  特に後者は、国文学関係の雑誌が充実。内容や執筆者から論文の検索
ができるので便利。また、マイクロフィルムや紙焼写真という形で、原本の
コピーを閲覧できる。所蔵者によってはフィルムからのコピーも可能。

テキスト】
 個別の作品については、さまざまな諸本のテキストが存在する。もっとも
見やすいテキストとして次のシリーズを挙げておく。代表的な古典作品の
ほとんどがこのシリーズに収められている。
  ○新編日本古典文学全集 88冊 2002 小学館
    〔現代語訳付きの信頼できるテキスト〕
  ○新日本古典文学大系 105冊 2005 岩波書店
   〔解説をはじめ、挿絵についての注も充実〕

  さらに、個人全集、分野別の全集がたくさん出ている。
  ○『校本芭蕉全集』11冊 1991 富士見書房 
   [芭蕉の全作品を収めた全集。語句索引により、芭蕉の用いた
   「ことば」の用例を検索できる]
  ○『対訳西鶴全集』14冊(富士昭雄ほか)1976 明治書院
   [やや古いが、各巻末に語彙索引が付されて便利]
  ○『八文字屋本全集』23冊 2000 汲古書院

  ほかに山東京伝、上田秋成や蕪村などは個人全集が刊行されている。
ジャンルの全集としては、仮名草子、噺本などさまざまな分野の集成、大
系がそろっている。調べたい本の作品、作者、ジャンルなど、とりあえず
は図書館の検索にかけてみよう。

解釈】
  テキストに挙げた新編全集や新大系よりさらに掘り下げた知識を得る
ために は、個別の作品評釈にあたる必要がある。
  ○阿部正美『芭蕉発句全講』5冊 1998 明治書院
   [発句について詳細な解説]
  ○尾形仂『おくのほそ道評釈』2001 角川書店
   [現代の解釈の集大成]
  ○堀切実編『『おくのほそ道』解釈事典 諸説一覧』2003 東京堂出版
   [段落毎に研究上の問題点を整理したもの。研究入門として便利]
  ○久富哲雄『奥の細道古註集成』2冊 2001 笠間書院
   [江戸時代の注釈書一覧]

年譜、資料集】
  全集に収められている場合が多いが、個別の年譜集も刊行されている。
  ○今栄蔵『芭蕉年譜大成』1994 角川書店
  ○野間光辰『補刪 西鶴年譜考証』1983 中央公論社
  ○鈴木健一『林羅山年譜稿』1997 ぺりかん社
 資料集
  ○大谷篤蔵ほか『芭蕉全図譜』1993 岩波書店
   [芭蕉真蹟の全遺墨類四五〇余点をすべて写真で収めた資料集]

入門書】
   近世文学の最大の特徴は、本が印刷・販売され、出版が一大事業と
なった点にある。写本が中心で、限られた人間が知識を独占していた中
世までとは異なり、ごく普通の人間が、読みたい本を購入できる時代が
やってきた。近世文学を考える場合、こうした出版業との関係も視野に
入れる必要がある。出版にかかわる人々を取り上げた入門書として一
冊あげておく。
  ○今田洋三『江戸の本屋さん 近世文化史の側面』1977 NHKブックス

  芭蕉については以下のものがわかりやすい。
  ○楠元六男『芭蕉と門人たち』1997 NHKライブラリー
   [門人たちとのかかわりも述べつつ、芭蕉の作品の変遷を解説したもの]
  ○上野洋三『芭蕉七部集』1992 岩波セミナーブックス
   [連句の基礎を知る上でも便利]

  西鶴の入門書もたくさんあるが、ここでは全体像をまとめた読みやす
いもの を1冊。
  ○長谷川強『西鶴をよむ』2003 笠間書院

事典類】
  江戸時代に関して、最近はビジュアル資料も増えている。作品理解の
上で 参考にし て欲しい。
  ○『江戸時代館』2002 小学館
  ○『絵でよむ 江戸のくらし風俗大事典』2004 柏書房
   [庶民の娯楽漫画「黄表紙」や「絵本」の挿絵3000点を収録]
  ほかに、河出書房の図説シリーズなど、さまざまな図録がある。

 

 

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