総説−資料を活用するための資料(Verson:2.02)
ある問題について調べたいのだが、どこから手をつけれはよいか分か
らない。そんなとき頼りになる基本的な文献・資料を紹介しよう。手当り
次第に調べるのではなく、まずは問題の性質を大づかみに把握した上
で、自分なりの切り口を見つけるよう心がけたい。
調べれば調べるほど分からなくなってくる気がして、うんざりするこ
とがある。が、投げ出す前に反省してみて欲しい。どこまでなら分かっ
たのか。どこからが分からないのか。取り組む前に比べれば自分が確実
に前進していることに気づくはずだ。
【事典類】
事典類にはおのおの独自の編集方針がある。ある事項の説明がどうも
分かりにくいというときは、面倒臭がらずに凡例(はんれい)を読み直して
みよう。案外あっさり解決することがある。
単語や成句を調べるには、まず以下の辞典・事典に当りたい。
○『日本国語大辞典 第二版』13冊 2000-2002 小学館
[古語から現代語までを網羅する、現在もっとも大きな国語辞書]
○『角川古語大辞典』5冊 1999 角川書店
○『古語大辞典』1983 小学館
○『時代別国語大辞典』(上代編1巻・室町時代編5巻)1967-2000 三省堂
○『大漢和辞典』13冊 1960 大修館書店
[漢字・漢語について必見の書]
次は作品別の索引類の一覧。 下記『国語学研究事典』の「索引目録」もあ
わせて検索すれば、語誌の把握はいっそう深められる。
○『国語国文学資料索引総覧改訂版』1997 笠間書院
日本語学関係の術語・用語を調べるには、次の5書がある。
○『国語学大辞典』1980 東京堂
[標準的な理解を示して定評がある]
○『国語学研究事典』1977 明治書院
[参考文献を検索するのにも便利。「索引目録」も有益]
○『日本文法事典』1981 有精堂
○『新版日本語教育事典』2005 大修館
○『言語学大辞典』1996 三省堂
[6巻が「術語篇」になっている。ただし、やや特殊な解釈を含むので要注意]
文学史上の諸事象や作品・人物を調べるには、次の三書がある。基礎的情
報が得られ、重要項目には参考文献も示されている。
○『日本古典文学大辞典』6冊 1985 岩波書店
○『日本近代文学大事典』6冊 1978 講談社
○『日本古典文学大事典』1998 明治書院
[全1冊のコンパクトな体裁だが、最新の研究成果を踏まえる]
歴史的事項を調べるには、以下2冊が有益。
○『国史大辞典』15冊 1997 吉川弘文館
○『日本史大事典』7冊 1994 平凡社
以下の2冊は上の2冊と併用することでさらに利用価値が増す。
○『日本文化総合年表』1990 岩波書店
○『日本文学大年表』1986 桜楓社
以下は、その他の特殊な分野の辞典・事典として代表的なもの。
○『角川日本地名大辞典』49冊 1990 角川書店
○『日本歴史地名大系』50冊 1979-1996 平凡社
○『日本暦日総覧』1992 本の友社
○『中国学芸大事典』1978 大修館
○『日本漢文学大事典』1985 明治書院
○『和歌大辞典』1986 明治書院
○『増訂版 歌枕歌ことば辞典』1999 笠間書院
○『日本歌謡辞典』1985 桜楓社
○『仏教文学辞典』1980 東京堂
○『仏教語大辞典』1975 東京書籍
○『岩波仏教辞典』1989 岩波書店
○『神道大辞典』1986 臨川書店
○『日本古典籍書誌学辞典』1999 岩波書店
○『くずし字用例辞典』1980 近藤出版社
【テキスト】
古典文学の主要テキストに校訂を施し、注釈を付したシリーズとして
は、次の5つに定評がある。なお、著名な作品には、 このほかにもそ
れぞれに複数の詳しい注釈書がある。
○『日本古典文学大系』102冊 1968 岩波書店
○『日本古典文学全集』51冊 1976 小学館
○『新潮日本古典集成』82冊 1989 新潮社
○『新日本古典文学大系』101冊 1989〜 岩波書店
○『新編日本古典文学全集』83冊 1994〜 小学館
[上記2つのシリーズは、最初の2つのシリーズにその後の研究成
果を盛り込んで装いを改め、現在刊行中のもの]
近代文学の分野では、著名作家の作品はたいてい、以下のような個
人全集にまとめられており、これが研究上の基本文献となる。
○『鴎外全集』38冊 1975 岩波書店
○『定本野口雨情』8冊 1987 未来社
複数作家の作品を集成したシリーズとしては、以下に定評がある。
○『日本近代文学大系』61冊 1975 角川書店
○『明治文学全集』100冊 1980 筑摩書房
○『編年体大正文学全集』16冊 2000〜2003 ゆまに書房
○『昭和文学全集』36冊 1990 小学館
○『日本現代文学全集』110冊 1969 講談社
【文献目録】
特殊な文献については、実際にその文献に当たる前に大まかな情報を
つかんでおくことが重要。下記の諸書がその手引きとなる。次のものは、
現存する写本・版本の総目録。書名のよみ、巻冊数、編著者、成立時期、
所在(所蔵図書館等)、活字本・複製本の有無を示したもの。
○『増訂版国書総目録』9冊 1991 岩波書店
○『古典籍総合目録』3冊 1990 岩波書店
次は、活字本・複製本についての基礎目録。
○『国文学複製翻刻書目総覧』正続 1989 日本古典文学会
以上の諸本に下記を併用すれば、検索は確実さを増す。
○『群書解題』1956〜 続群書類従完成会
○『史籍解題辞典』1986 東京堂
【研究史・研究動向】
研究はむろん自己の問題意識から発したものでなければならないが、
たいていのテーマにはすでに多くの先行研究が積み上げられている。そ
れらを批判的に整理しておくことは、研究そのものにとって大切な立脚
点となる。
以下の2つは古典文学・近代文学の主要論文を、作者・作品・分野別
に集成し、解説を加えたもの。関心のあるテーマに沿って2つのシリー
ズを年代順に追えば、研究史の流れをほぼつかむことができる。
○『日本文学研究資料叢書』100冊 1969〜 有精堂
○『日本文学研究資料新集』30冊 1989〜 有精堂
次に掲げるのはいわゆる「講座もの」で、各ジャンルごとに幅広い領域を
網羅する点に特色をもつ。講座ものは刊行時期がさまざまで、ものによっ
てはやや古い内容があるので注意が必要である。
○『岩波講座日本語』13冊 1978 岩波書店
○『日本語講座』6冊 新装版 1990 大修館
○『講座日本文学』13冊 1971 三省堂
○『講座日本文学の争点』6冊 1969 明治書院
○『日本文学講座』12 1988 大修館
○『岩波講座 日本文学史』18冊 1997 岩波書店
上記のほか、次のように、作品別の講座もある。
○『万葉集大成』20冊 1955 平凡社
○『源氏物語講座』9冊 1972 有精堂
上記の諸書によって、定評のある研究書の情報が得られたら、ぜひ買
い求めて座右に置こう。古いものは版元で品切れとなっている場合があ
るが、古書店の目録(研究室に何種類も送られてくる)に載っているこ
とも多い。なお、Webでは以下のサイトが参考になる。
○日本の古本屋」
○インターネット古書店案内
【定期刊行物】
月刊ないし季刊で発行される定期刊行物(雑誌)は、研究史に加えて
同時代の研究の動向を知るための記事が掲載される。
次の2つはライバル関係にある二大月刊商業誌で、毎月なんらかのテ
ーマを設けて特集号を組んでいる。特集は文学の分野を中心に、日本語
学や古典教育にも及ぶ。
○『國文學』學燈社
○『国文学−解釈と鑑賞』至文堂
『國文學』の別冊として臨時に刊行される次は卒業論文作成者をターゲッ
トにした親切なガイドブックである。
○学燈社『別冊国文学』の「必携」シリーズ
次の2つはそれぞれ日本語学・言語学の月刊商業誌。
○『日本語学』明治書院
○『月刊言語』大修館
学会誌等の専門分野別の雑誌については各分野ごとの内容を参照
のこと。
【文献の探索】
次は、毎年の雑誌論文や単行書を時代・分野ごとにまとめ たリスト。
最新の研究文献の検索に欠かせない。
○国文学研究資料館編『国文学年鑑』至文堂
○国立国語研究所編『国語年鑑』大日本図書
日本語・日本文学関係の雑誌は、主要なものは1階研究室の「中の間」
に、他は2階大学院研究室に、それぞれ製本して並べられている。また、
現代日本語関係の雑誌・図書は2階日本語教員課程室にもある(教員課
程登録者以外も利用可)に置かれている。研究室の目録になくても、本学
の図書館に置かれている場合がある。
本学で入手しにくい論文は。次に転載されている場合もあるので利用し
たい。
○『国文学 年次別論文集』学術文献刊行会
○『日本語学論説資料』(旧称『国語学論説資料』)論説資料保存会
論文やレポートに先行研究を引用する際には、出典を明記しなくては
ならない。これを怠ると、本人にその意思がなくとも剽窃(ひょうせつ)
と見なされる。資料をコピーするときには、必ず、資料名(書名または
誌名)・刊行年月日(雑誌の場合、巻号も)・出版社名をメモしておこ
う。表紙や奥付を一緒にコピーしてしまうという手もある。
Webからは情報を手軽に入手できる。下記のサイトを出発点にして
さまざまな探索を行うとよい。
○インターネット学術情報インデックス
[東京大学附属図書館が運営する、インターネット上の学術
情報源を蓄積し、検索できるようにしたデータベース]
○図書・雑誌探索ページ
[実践女子大学図書館が運営する、文献探索の情報源を
まとめたサイト。文献探索法についての記事もあり便利]
○国内人文系研究機関WWWページリスト
○国内言語学関連研究機関WWWページリスト
[上記2つは、Web上の人文系諸分野・言語学についてのサイトを
網羅しようとするもの。随時更新されている。]
Webの情報の質は千差万別・玉石混淆であり、怪しげなものも少なく
ない。Webで得た情報は印刷物にあたって確認することを心がけたい。
【視聴覚資料】
(作成中)