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日本語教育 (Verson:2.01)

 

  日本語教育という研究分野は、他の分野と比べて歴史が浅いといえる。

多くの大学に日本語教育関係の学科や専攻が設けられたのは20年ほど

前のことである。

  日本人にとって日本語教育は、日本語を教えるという点で国語教育に

似ているし、それを外国語として教えるという点で英語教育に似ているが、

誰に教えるのかを考えると、その特徴がはっきりする。

  一般に、教育は、①誰に、②何を、③どのように、というように考えていくと

わかりやすい。日本語教育の勉強も、①日本語を学ぶ外国人について知る

こと、②主な学習内容としての日本語について勉強すること、③方法すなわち

外国語教授理論について学ぶことが不可欠である。以下、①②③それぞれに

ついて述べるが、その前に、日本語教育の世界を概観するための本を二三

紹介する。

  ○日本語教育学会編『新版日本語教育事典』2005 大修館書店

   [これは最新のものであり、日本語教育の全体を知るのには有益である]

  ○日本語教育学会編『日本語教育ハンドブック』1990 大修館書店

   [やや古いが、上記の事典よりは実践的である点に特徴がある]

  ○日本語教育学会『日本語教育 100号記念号』1999

 [創刊40年以上になる学会誌に載った論文や実践報告などの タイトルが
   すべて整理されており、日本語教育の研究領域を知るのに便利]

 

①外国人日本語学習者について

  とくに1980年代以降著しく多様化した日本語教育では、どのような外国人が

何のために日本語を習うのかについて考えることが重要である。そのための

勉強は、日ごろからマスメディアなども活用して国内・海外の外国人日本語

学習者について興味・関心をもち理解を深めることが肝要であり、教える準備

として学習者について詳しく知ること(ニーズの分析)は実際に学習者が

決まって初めて可能になるものであるので、ここでは参考図書の紹介を控える。

 

②日本語などについて

  教える内容は実は日本語に限らない。日本語教育で「日本事情」や「日本

文化」と呼ばれる分野で求められる、日本の政治・経済・歴史・ 思想・芸術、

日本の古典文学などについての幅広い知識・教養、これらも、①と同様一朝

一夕で得られるものではない。

  中心的な教育内容となる日本語も、狭義の日本語研究の成果だけではなく、

言語行動・異文化コミュニケーションなどについても学ぶ必要が ある。言語学、

日本語史、古典文法などの勉強も大切にしてほしい。とくに日本語学の分野は

重なるところが多いので、当ハンドブックの日本語学のページは熟読していた

だきたい。

  ここでは、日本語教育の分野で広く読まれている本を(伝統的な)いくつかの

分野ごとに二点ずつあげておく。

 

(音声)

○天沼寧ほか『日本語音声学』1978 くろしお出版

○柴谷方良ほか『言語の構造 音声・音韻篇』1981 くろしお出版

(語彙)

○森田良行ケーススタディー 日本語の語彙』1989 桜楓社

○柴田武他 『ことばの意味 1~3』1976~1982 平凡社

〈文法)

○野田尚史『はじめての人の日本語文法』1991 くろしお出版

○寺村秀夫『日本語のシンタクスと意味Ⅰ』1982 くろしお出版

 

③外国語教育の方法について

  外国語教授法は、欧米からの理論が基礎になっていることが多く、「流行」
といえるほど次々に新しいものが紹介されてきた。しかし、まずはしっかりし
た概論書を丁寧に読むことによって、外国語を学ぶことや教えることに関す
る、少しでも普遍的なメカニズムについて基礎的な理解を得ることが大切だ
と思う。読みにくい部分もあるが、次のような本をお薦めしたい。翌日教室
で教えるためのテクニックというよりは、外国語を学ぶという営みに見られ
る傾向、法則、原理といったものについて理解を深めることができるだろう。

 

W・リヴァーズ『外国語習得のためのスキル 第2版』1987 研究社

R・ユリス『第2言語習得の基礎』1988 ニューカレントインターナショナル

○伊藤嘉一『英語教授法のすべて』1984 大修館書店

 

  次に、外国語教育のひとつとしての日本語教育についてだが、ここでは

一般的な参考書を何点かあげるにとどめ、定期刊行物や文献索引を紹介

する。

 

 (参考書)

  ○木村宗男ほか編『日本語教授法』1989 桜楓社

  ○『講座日本語と日本語教育 13』1989 明治書院

  ○『講座日本語と日本語教育 14』1989 明治書院

  ○遠藤織枝編『概説 日本語教育』1995 三修社

 (定期刊行物)

  ○日本語教育学会『日本語教育』

  ○国際交流基金日本語国際センター編『世界の日本語教育 事情報告編』

  ○国際交流基金日本語国際センター編『論集 世界の日本語教育』

  ○早稲田大学日本語研究教育センター編『講座 日本語教育』

  ○㈱アルク『日本語』

 (文献索引)

○国立国語研究所編『日本語教育文献索引』1984

○国立国語研究所 日本語教育センター編『日本語教育学会誌・機関誌

   掲載論文等文献一覧』1996

 

  日本語教育についての勉強で欠かせないのが教科書研究だが、今回は、

教科書については紹介できなかった。最近は、市販されているものだけでも、

学習者や学習目的によって、また学習レベルによって、多種多様な教科書が

ある。とくに自分の興味のある日本語教育の分野でポピュラーな初級日本語

教科書を詳しく調べてみることは有益だと思う。

  なお、外国人が日本語を習っている授業の様子を垣間見るのには、次の

ビデオ資料が役立つだろう。

 

  ○日本語教育学会監修『ビデオシリーズ 日本語授業の実際』全35巻

   1987~ プロコムジャパン

 

その他-ホームページなど

国際交流基金  
   ○日本語教育学会

国際協力機構 

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