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岡部の家庭と人生観は、

「この完全無欠のような男の底にある、憂愁の翳りを、ちらと垣間見たような気がした。岡部には、家庭的なことで何か、人知れぬ悩みがあるのかもしれない。」(死者の木霊)

「岡部は一男一女の父親であるが、世間の常識からいうと決していい父親ではないと思っている。家庭サービスなどというものには縁遠い生活だし、性格的にもそういうことに向いていない。かつて、妻の佐智子が育児ノイローゼに罹った時でさえ、あえて家庭に縛られるようなことはせずに通した。

妻の親たちが呆れて、すんでのこと離婚騒ぎになったが、岡部はそれならそれでいいという態度を続け、結局は丸く収まった。」(萩原朔太郎」の亡霊)

「三月二十五日は娘のひで子が四度目の誕生日を迎える。岡部は本部の電話で妻にケーキを買って帰るべきかどうか、お伺いを立てた。佐智子は大いに関心してみせた。」

「子供たち、喜ぶは。いいパパですこと」

「“バカ”と岡部は苦笑した。主任捜査官が“いいパパ”なんかであっていいわけがない。捜査本部に釘付けになって、ひっきりなしに入ってくる情報を分析しているか、あるいは現場に飛び出し、ホシに肉薄しているのがあるべき姿というものではないか。」(萩原朔太郎」の亡霊)

「警察学校をトップで卒業したとは言っても、ノン・キャリアでは、行きつくところは最高位でも警視どまり。そういう未来の見えていることが、いかにも味気なく思えたことだ。しかも、自分には謳歌するような青春がない。

その岡部を忠実な警察官として職務に駆りたてたものは、正義感でも、むろん出世欲でもない。要するに捜査するというそのことが面白かったのだ。」 (萩原朔太郎」の亡霊)

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