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「シーラカンス殺人事件」における岡部警部人物像の検証

「岡部は神谷部長刑事と坂口刑事に守られるようにして特設展示場に入って行った。実際、少し着痩せするタイプの岡部が、見るからに刑事面の二人のあいだに挟まっていると、SPに護衛された外交官といった印象を与える。」

着痩せするというからには、実際は体格はいいんでしょうか?

「警察学校を優秀な成績で卒業した。」岡部は、柔道か剣道かどちらかの有段者であるはずだし、当然に逮捕術もマスターしているのです。

「SPに護衛された外交官といった印象を与える。」というのは、体格が貧弱なのでしょうか?

それと、外交官のイメージとは?

光彦の身長が1m75cmに対して、1m70cm前後なのでしょうか?

もっとも、SPが必ずしも身長があって巨漢だと断定できないし、この時点では、一概に言えないんでしょうね。

「岡部は敏感に桜井の表情を察知して、たたみかけるように訊いたが、桜井は首を横に振って否定した。」

いかにも、敏腕刑事という印象を受けます。

「岡部は高辻と阿部に平等に愛想よく挨拶した。高名な警部ということで、安部はかなりのベテランを想像していたのだが、実物は見るからにスマートな青年だった。」

こうなると、ますます分からなくなりますね。

「岡部の一見頼りなげに見える言動が、じつは鋭い洞察力を包むカムフラージュではないかと思えてきた。少なくとも、自分にはない秀れた知力がこの人物にはあることだけは間違いない、と安部は思った。そして事件の結末には、自分や高辻などが想像もつかないような劇的な幕切れが待ち受ているのではないかという、漠然とした不安を感じるのだった。」

これは、センセの序盤における布石ですね!

ここでは、「鋭い洞察力」と「劇的な幕切れ」に着目しておきましょう。

「(警察官にしておくのは惜しい--)というのが、岡部警部に対する木暮の第一印象であった。余分な肉を残していない--、かといって貧相なほどは痩せ過ぎてもいない柔和な顔立ち。明敏そのもののような双眸。スリーピースをさりげなく着こなすスリムな体型。気取りのない動作がしぜんに創り出すノーブルな雰囲気--。こういう人種があの殺伐とした警察社会の中に生息しているということは奇跡と言っていいだろう。」

痩せ過ぎていないのは、顔立ちだけなんですね!そしてその顔立ちは柔和だと。体型はスリムで、スリーピースをさりげなく着こなしているんですね。

でも、なぜ、警察官にしておくのは惜しいのでしょうか?

だけど、私、この一連の表現は好きです。

「岡部は折り目正しく頭を下げた。仕種の一つ一つがどう見ても警察官らしくない。かといって銀行員のような媚があるわけではない。強いて職業を見立てるなら外交官と科学者をミックスしたような--といったところかもしれない。そういえば、この男の目の輝きは相手を好奇心の対象として見る科学者のそれだ。」

こういう表現がセンセらしいのかな?勿論、好きですよ。

ところで、シーラカンスからサルノコシカケ(うろこ)、さらにジュースの蓋に着目するという、奇抜な発想のなかで謎を解き明かすという岡部警部の推理の冴えは、驚嘆に値しますね。

ちょっと、印象的な記述がありました。

「青木ケ原樹海は山梨県の上九一色村、鳴沢、足和田の三村にまたがっている。」上九一色村ですか・・・

「遺体は想像していたとおり、かなり酷い状態だった。それでも多少の修復を施してあるのだろうから、恐らく発見された時は見られたものではなかったに違いない。唇の肉は多少残っている程度で、剥き出しになった歯がしっかり噛み合わされている形相は物凄い。」

「(珍しいな---)岡部は思った。一般に服毒死の場合には、苦悶のあまり口を開けているのがふつうだ。」

岡部警部は、あくまでも冷静に観察していますね。光彦だと正視に耐えられず逃げ出しているところでしょうか。

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