Sounds Zounds! 大舘健一

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 レコードの回転数は相変わらずに33rpmだってのに、世の中を飛び交う情報の単位はKbpsからMbps、最近はG(ギガ)bpsなんてのも耳に慣れてきました。そんな現代社会のめまぐるしいスピードにペースを乱されていませんか?

 こんにちは。大舘健一(オオダチケンイチ)です。

 日々の慌しさの中で、気がつくと呼吸は浅くなり、自分の事で精一杯で、周囲への思いやりだとか気遣いも忘れがち。そんな時、乱れた呼吸を整え、いつもの優しさとか五感を取り戻させてくれるレコード達、名付けて「調息盤」を、今回は僕の一週間とあわせてご紹介させていただきます。





■The Singers Unlimited『Four of us』

■The Singers Unlimited『Four of us』
月曜日 25:20
いつも通り慌しく1週間は始まっていく。結局最終一本前の電車で帰宅。一杯のコーヒーをすすりながら聴きたくなるのがこのレコード。彼らのレコードはどれも安心して聴けるものばかりですが、中でも僕の一番はコレ。逆に、このレコードを聴いていられない、手に取ることができない時ってのは、いまいち調子の良くないとき。この感じだと今週もなんとかいけそう。お薦めの曲は何と言っても「We've only just begun」。そうです、1週間はまだ始まったばかり。




■Martine Denny『Quiet Village』

■Matin Denny『Quiet Village』
火曜日  25:41
週の2日目ともなると、周りの人もエンジン全開。やや乗り遅れ気味の僕としては、 ちょっぴり“逃避モード”。そんな夜はコレ。目を閉じると、そこは南国の密林。 獣たちの鳴き声におののきながら、足に絡み付く植物たちを掻き分けて、道無き道を進む。突然目の前がひらけたと思った途端、そこは「美女だけの村」。濃厚なもてなしをうけて、「もう、日本には帰りたくないーい」。




■Ben Watt『North Marine Drive』

■Simon & Garfunkel『The Only living boy in New York』
水曜日 22:10
一応本日はノーザンディ(NO残業日)。といいつつも、会社を出たのはつい先刻。 ちょっと寄り道して、通いなれたカフェへ。NY出身のオーナーが経営するこのお店は、外国人率も高く、ちょうど今宵もポエトリーリーディングをやってる黒人の姿が見える。気分はグリニッジヴィレッジ。いつものフレーバーコーヒーに口をつけようとすると、聞えてきたのがコレ。「いとしのセシリア」のB面収録曲。EBTGの カバーもよかったなぁ。「東京で生き生きしているのは、僕だけさ」。口の中で唱えながら、家路につく。




■Simon & Garfunkl『The Only living boy in New York』

■GARY McFARLAND『Soft Samba』
木曜日 25:38
今宵も終電ですが、週末も近いのでちょっと気分は楽。横目で週末のカレンダーを見ながら、鼻歌まじりで聴くならコレ。ビートルズ「She loves you」にあわせて、 “Yeah!!Yeah!!”とガッツポーズをきめたら眠りにつこう。ちなみに、見開きジャケ の中には「ソフトサンバカクテルの作り方」なんてレシピも載ってたりして、否応無しに週末への期待も高まります。ジャケもナイス!




■Gary Mackferland『Soft Samba』

■Arther Lyman『Hawaian Sun set』
金曜日 25:45
合コンのお誘いも丁重にお断りして、結局残業。久しぶりにスーツ着て来たのに。 まっ、とりあえず明日からはお休みだし。ホッと一息ついたところで、聴きたくなったのがコレ。Matin Dennyよりも湿度はやや低く、海辺の心地よい風を感じる。汽笛の音を聴いているうちに、海が見たくなってきた。そうだ。明日は海に行こう。




■Arther Lyman『Hawaian Sun set』

■Ben Watt『North Marine Drive』
土曜日 11:00
思わず日の出前に目が覚めたので、愛車MINIで関越をひたすら北上。日本海を目指す。どちらかというと「北」系な僕は、南国の青く透き通ったサンゴ礁よりも、日本海の荒波と、内部に寂しさと美しさとをたたえた海水の色が好き。浅黄色といったらいいのかな。 海辺の道を走りながら聴くならコレ。一番好きなレコード。




■Glenn Gould『ゴールドベルク変奏曲』

■Glenn Gould『ゴールドベルク変奏曲』
日曜日 22:30
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。明日からの仕事に備えて早く眠ろうと思っても、一向に眠くならない。そんな時はコレ。55年録音の“若気の至り”なのもいいけど、最近はもっぱら81年録音のこちらを愛聴。不眠症に悩むカイザーリング伯爵のためにバッハは作曲し、弟子のゴールドベルクに演奏させたなんて逸話もありますが 、グールドのこの演奏は一つ一つの音に深い思想を感じて、いろいろなイメージを想 起させてくれる。ますます眠れない。




■志村ふくみ『一色一生』

■志村ふくみ『一色一生』
日曜日 23:44
もうすぐ日付が変わる。次の1週間のことを考えていると、また呼吸が浅くなって きた。そんな時、手に取るのがこの本。著者は染織家。綴られる日本語はキラキラ と輝いていて、その文体は体の中に自然とスーッと入ってくる。
彼女は色についてこう語る。
「植物から染まる色は、単なる色ではなく、色の背後にある植物の生命が色を通して 映し出されているのでないでしょうか?こちら側にそれを受け止めて生かす素地がな ければ、色は命を失うのです」。
これはもちろん音楽にも当てはまることで、自分で音楽をつくることのできない僕は 、音楽はレコードを買って聴くものでしかありません。受け手側である僕に、それらの音楽と向き合うだけの素地がなければ、本当の音は聞こえてこないのでは? 珍しいレコードを手に入れて一喜一憂しているだけでなく、聴き手としての素地を磨いていきたいですね。音を「いただく」という態度を忘れずに。






To Mr. 大舘健一
 仕事を終えて家にたどり着けば、もう夜も遅く、誰かに電話をすることもはばかれる遅い時間。それでも寝る前には、好きなレコードを必ず聞いてからベッ トに潜り込む毎日と聞きました。そんな「調息盤」たち。彼がレコードと友達づきあいをしていることがよく分かります。
 ショップの店頭で試聴しているレコードを、コレダ!と思った時に、僕らはどんな顔をしているのだろう。コレダ!レコードを見つけた時の顔つきがなんとも素晴らしい若きヴァイナル・ ハンターの彼。どうぞまた気に入ったレコードを見つけたときの丸々とした笑顔を見せて 下さいね。(大江田)

 


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