Sounds Zounds!

| Quarterly Magazine Hi-Fi Index |

 


 皆様 はじめまして。藤瀬俊と申します。このたび 大江田さんより「遠くに見える男…」「遥かなる男…」なるテーマを頂き、私め まだまだ若輩者ですが、筆をとらせて頂きました。なんせ永遠の男像……って。どひゃぁ〜!!
 遠くをみる。遠くを…遠くを……。 だんだんと ぼんやり視界にかかる乳白色のフィルター。遠くに見える…かすかな…永遠の……、ON A CLEAR DAY……、あまりに日常的な……、ショウビズのたくましさ、はかなさ……、とろろ、ヘルメス、水銀のような音楽(細野晴臣氏、浅田彰氏)……、あんまりに美しいので、あんまりに強烈なので、どうしたって泣いてしまうのです(ジル・ドゥルーズ氏)……、「ハッピーじゃない」なんて 変だって言わないと!(いとうせいこう氏)……。
 そんな乳色の……じゃなかった、乳白色のモヤモヤしたフィルタ−の中、なんとなくな気分で、レコード(CDもございます)を選ばせて頂きました。乳白色のフィルターは、実はカメラにパンストをかぶせたものだった…と、いうようなこともあるでしょうけど、あしからず…。




■Steve Alaimo / Starring
Everything But The Girl / Walking Wounded

  僕は「遠くをみる」ことが好きです。
 遠くにあるものが、チラッと動く瞬間が好きです。それは雑々と 遠くにある いろんなものが、ごちゃごちゃと動く様というより、何もない、静寂というか、無気力な けだるい景色の中 キラッと ゆらめくような動きが好きです。
 キリンさん(中谷美紀クン)も好きです。でも、ゾウさん(岡本綾クン)が もっと好きです。しかし、クロネコヤマトナデシコ「サトエリ」も捨てがたい。んもう、まいっちんぐ。
 ……独り海岸の岩上、遠くを想う スティーブ・アライモ。ニューヨークのツイスト兄ちゃんが、オールディーズ、ジャズ・スタンダードを全編 SKAしちゃったアルバム。ジャマイカからはブルース・バスターズの「I Don't Know」のカヴァー(最高)もあるでよ。口チュク(トースティング)も、ンッスカッ!ンッスカッ!……好きなんだねぇ、スカ、ジャマイカ。「Everybody Likes To Do The Ska?」……独り遠くジャマイカを想う、アライモ。(どして?)



■ Ken Lazarus / Reggae Volume 2
UA / 電話をするよ


 アライモくんが遠くジャマイカ(そんなに遠くないと思うけど)を想い、黄昏れているとき(「Stand By Me」は、ナイス黄昏れSKAカヴァー)、現地ジャマイカで 乱痴気騒ぎを楽しんでいたケン・ラザルス。ボブ・ディランからセルジュ・ゲンスブール、先進国のヒット・チャートを ほっこりステディ・ビートで歌いまくってモテまくり。
 「私は影に生きる男。海辺でも俺は影にいる。太陽の下で裸を見せるにはアドニスくらい美しくなくてはならない。それが慎ましさというものだ。」(セルジュ・ゲンスブール)
 ケン・ラザルスは歌う……「ジュテーム・ノン・モア・プリュ」(勿論、喘ぎ声入り)。
 モテるために音楽をはじめたとウソぶくキップ・ハンラハンも、きっとニッコリ。ホッコリ。モッコリ。…「ニッコリ」、中沢新一氏の「はじまりのレーニン」を読んで以来、笑いを知ることは世界を、生命の神秘を知ること、なぞと笑えなきゃやってられない私めです。ニッコリ!モッコリ!?(ですが、最近 何も考えていないのに ニヤつく癖があることに気づき、不安です。)




■Hector Casas / Lo Mejor De Los Staring Brothers
ERICA / You Used To Think

  男(ぼかぁ、漢という字は使いませんよ。男塾なんてヌルイヌルイ。今は黒沢の時代。)なら、誰しも遠くにみえる父の背中……。
 レコード・ジャケットに見た父の姿。ヘクトール・カサス(右上の人です)。あまりにソックリだったもんで…。ハッとしてヴヴッ…。大学での4年間、だらしない生活だったにも関わらず、何も言わず見守ってくれた父(さすがに7kg くらい肥った時は「運動くらいしろ」と言われました)。ありがとね。勝手ながら、この場をかりて深く深く感謝です。
 僕は、生まれてこのかた父の趣味や、性質(性格は温和?)、皆目わかりません。知っていることといえば、巨人と雑誌「サライ」が好きなことくらい。ハナレグミの「家族の風景」が聞こえてきます。
 「友達のようでいて、他人のように遠い。愛おしい距離が ここにはあるよ」。
 僕は、この距離感が好きです。
 そして、このアルバムの「Going Out Of My Head」「Tristeza」での ヘクトール・カサスのヴォーカルと、バックのコロコロ、キラキラとした演奏との距離感(大変離れてます)が好きです。
 しっかし、このジャケ写の股をくぐるメンバーの自信たっぷりな表情ったらないです。いいなぁ…。お父さん! 人に股くぐらせたりしてないでしょうね?



■Contortions / Designed To Kill
Elyse Weinberg / Elyse

  昔、唾を吐く行為が癖になったことがございます。ペッ、ペッ、と ナウいチンピラも ハズくてやらないだろうけど、BOWWY (ボウイ)とゾッキー文化は僕らの通過儀礼……。っていうことにしたいけど、あの時はもう高校3年生でしたので、とうにゾッキー文化はモテるためにゃあ、ありえないわけで……1998・夏。いま考えると、僕にとって唾は、出そうと思った瞬間に出せる、あの生成速度。目の前に、閃光のように一瞬 キラめく唾。これを僕がつくったんだ……こりゃあクリエイティヴだ……なんて感じてたのかも。はい、バカでした、僕。当然 当時付き合っていた女の子には大変嫌がられました。あ…、ウン○は違いますよ…、そんでもってアレ(一番クリエイティヴなんだろうけど)も ちが……。
 と、とにかく僕は何を言いたいのかというと、僕は いまだ反抗期なのであります。
 この数年、なんだかやたらと「ナチュラル」を尊しとしたものが 幅をきかせておりますが、「オーガニック」と違って、僕は「ナチュラル」くんがコワいです。結局リビドーにて動いているのになぁ…。癒し系だってグラマラス。「ナチュラル」って無責任な快楽思想だなぁ…いいなぁ……ちきしょー! まだツッパッてる僕はコワいもの、幅をきかせているものに抗うのです。ペペペッ。「ディサイド・トゥ・キル」です。ウソです。コントーションズです。ジェームス・チャンプのヤンキー・フリーキー・シーモンキーなサキソフォンに、12インチの ぶっとい音圧で小心者の僕は痙攣必至なのであります。ウゲッ!ものすごい世間の風あたり。吐いた唾が自分にかかっちまった!せっかくこしらえた僕のエクストラ・ヴァガンス用の一張羅が台無しになっちゃった!



■2 many dj's / as heard on radio soulwax  
かまやつひろし / ムッシュー


 「批評家(クリティック)より狂信家(ファナティック)に!」というボリス・ヴィアンの言葉が好きです。クリティックな作業の果てに、ファナティックに至るということ。わかっちゃいるけど、いきなり僕はすっとばして「ファナティックに い・く・ぜ!」なんて柴田恭平も真っ青なこというもんだから、先を視て、真っ白になるんです。
 シロ……。そういや、瀧口修造大先生の「余白」って本もあるし……ウフフ…あははっ!……余白、白、余白、白、白、天草四郎(窪塚くん from 魔界転生)、……そうだ、もう口をあんぐりあけて真っ白にダイヴするしかにゃい。
 でも、オノ・ヨーコみたいな つまんねぇこたぁしない。2 Many DJ's。
 オノ・ヨーコが切り裂いて空いた真っ白なキャンバスの穴に紙袋を詰め込むのです……うわっち! 逆さにしちまった! どしゃぁーーっと落ちた禁断の果実。2 Many DJ's との1時間、僕は狂乱の中 果実を頬張りながら必死で拾うのであります。
 TOO MANY …多いことは いいことだ。過剰なことも、きっと、いいことだ。フランチャイズ万歳。マイケル・ジャクソン「ビリー・ジーン」にレジデンツ「Kaw-Liga」(ハンク・ウィリアムスのカヴァー)が乗っかって……10ccにディスティニー・チャイルドが乗っかって HOO!! HOO!! ………今やトマトも断食する時代(糖度が格段に増すそうです)。「昔はムチャもしたもんだよ」…厳格に育てられた果実が、グレた後、まるくなる、旨くなる……なぁんてよくある話。そ、そ、そそ、それにしても おいしいんだなぁ、僕は好きなんだなぁ、やめられないんだなぁ……断食する果実って、きっとダダッ子だったんだろうなぁ。
 ワイルド・バンチ「Danger! High Voltage」にて、糖分の取りすぎにて血圧は最高潮……フー、フゥー…はぁ、はぁ…。高血圧にて うっかり失禁。真っ青。もう動き過ぎて疲労困憊。真っ白。
 ……ああ、青い空、白い雲(このCDのラストを飾るのは「On A Clear Day」ペドラース・ネタなのです)……青の時代、余・白……青と白とで僕は フールレアリスム宣言するのであります。イエ〜イ!(「イエーイ!」で、のしあがった高島忠男氏の鬱病からの復活を祝って)




■Paul Simon / The Paul Simon Song Book
浅川マキ / 灯ともし頃

 皆様、いかがでしたでしょうか?
 長々と、グチャグチャまくしたてた後、即、独り反省会がはじまるのです。BGMは ポール・サイモン・ソングブック。
 いや、、もう…ごめんなさい…。ロックのロの字も知りません。洋楽好きだけど、英語弱いんです、はい。そこで、山本安見氏の翻訳(僕の持っているのは日本盤なのです)、ポ−ル・サイモン自身の情けなさいっぱい、夢いっぱいの魂の抜けるようなライナーより一言、
 「きっと、1年も経てば(もしかしたら1年も経たないうちに)この拙い文章を前にして僕はこう思う事だろう。『なんて事だ! こんな下らないものを書いたのは本当に僕なのだろうか?』」……最後に とんでもない捨て台詞で、後味悪く、途方もなく、締めさせて頂きたいと思います。
 ……っていうか やっぱりカメラにかぶせたパンスト、穴 空いてた? 僕の目は節穴? いやいや、ハートマークで いっぱいです。




■Mighty Sparrow / The Village Ram c/w She's Been Gone Too Long
浅川マキ / 灯ともし頃

 さぁさぁさぁ! 開き直った後は ミスター・開き直り、マイティ・スパロウの魂の皮肉の咆哮をあびましょう。「The Village Ram」にゃあ、最近のカリプソ・ブームなんて軽く ふっとんじゃうよ! ブペラッ!
 浴びるほど酒を飲んだ後 路上のゴミ溜の上にて聴こえるヤサグレ・エキゾ。裏面の「She's Been Gone Too Long」で踊って ナンパして フラれて、「The Village Ram」にてゴミ溜へ。まさにクラビィーな7inch!
 
 ではでは、皆様 ごきげんよう!





To 藤瀬俊
 美大在学中から、レコードにはまりまくり。ちょっと不思議なベクトルを秘めたレコードを、絶妙な手腕で見いだして、抱きとめています。読書家にして、ロマンチスト。音楽に自分自身のストリーを重ね合わせる空想家。なんせ学生プラス・アルファの今の身には、レコードを健啖するわけにはいかないのですが、これはと思う音楽をレコードを見いだした時のうれしそうな顔は、それは幸せそうです。その気持ちの一端が、エッセイににじんでいますでしょうか。
 なおMighty Sparrowのシングル・スリーヴは、イラストレイター 菅野一成君の作品です。こちらを付記。
(大江田)



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